ワンダーウーマン絶対見るウーマン

愛されたければまず相手を愛すこと 私たちは愛から生まれてきたから

吉澤嘉代子『残ってる』— 朝帰りの、あの心もとなさ。

www.youtube.com

吉澤嘉代子 『残ってる』
(歌手、作詞、作曲:吉澤嘉代子

 

朝帰りの道の途中。相手への気持ちがまだ残っているのに、そんな私を置いて今日という日常がまた始まっていく…こんな気持ちになったことがある方は多いんじゃないでしょうか。もう、この曲を初めて聴いたとき、「え!?私か!?」ってくらい共感of共感しました。そもそもこんな朝帰りの経験なんて人に話せるものでもなし、話すといってもこの切なさを表すには語彙が、語彙が足らねえ~!状態で、また自分の言葉にすれば軽薄なものとなって消えてしまいそう。しかし、この曲はそんな切なくて不安定な感情をみごとに表現しています。

その思い出は大切なキャンディーのように自分だけでじっくり溶かして味わいましょう、この曲とともに。

改札はよそよそしい顔で
朝帰りを責められた気がした
私はゆうべの服のままで
浮かれたワンピースがまぶしい 

まず この、歌い始めから一気に引き寄せられます。いつもは通勤・通学で素通りする改札を今朝は反対方向から通るという、非日常。周りの人間は、自分が昨日と同じ服を着ているなんていうことは知らないのに、昨夜なにがあったかを唯一知る私だけがなんだがそわそわしてしまって、デート用の服装が浮いてしまっているような気がしてならないのです。もう巻いた髪とか取れかけてるのね、始発ではなんかそれも居心地が悪いの。

風邪をひきそうな空
一夜にして 街は季節を越えたらしい 

いつもと同じ朝なのに、いつもと同じ街並みなのに、まるでひとつ季節が過ぎてしまったかのように感じてしまう。

まだ あなたが残ってる からだの奥に残ってる
ここもここもどこかしこも あなただらけ
でも 忙しい朝が 連れて行っちゃうの
いかないで いかないで いかないで いかないで

余談ですが、とある日に思いがけず相手の家で過ごしたことがありました。相手は仕事があるのでこれからお風呂に入って準備しなければならず、自分もスキンケア等何も持ってきてなかったのでシャワーを借りずそのまま帰ることにしました。じゃあね、と言ってドアを出ると、秋から冬へと変わっていく朝焼けの空に、自分の吐いた息が白く舞い上がって消えていきます。それを眺めていると、一呼吸置いて、後ろからガポン、という音の後に家の窓から白い湯気が大きくもれて舞い上がっていく。その様子を見ると寂しくて、でもなんだか愛おしい気持ちになりました。きっと、私はまだ昨夜を引きずっているのに、相手は新しい一日を始めようとしているのが寂しかったんだ。けど、その白い湯気が住宅街の空に舞い上がっているのを見て、こんな自分たちもその日常の一部分であることを実感して、また愛しくなったんだなぁー。はぁー。(大の字)

私まだ 昨日を生きていたい

 ほんまそれ。そう、本当に好きな人と過ごした朝帰りの日ってこれしかない。朝一緒に支度して別の服を着て出かけるのではちょっと違う。昨日の食事からその後までの出来事を何度も自分の中でループして、ずっとその中を生きていたい。ええ…?お仕事…?したくない~。

駐輪場で鍵を探すとき
かき氷いろのネイルが剥げていた

ここ!!!!!!!!

この一文がもう色んな意味を含みすぎて最高ですよね。ネイル(恐らくセルフネイルでしょうか。そこも良い。)が剥げているのは、その…いたした内容の激しさを物語っているとも言えますし、その時までネイルが剥げていることに気づかないほどまで彼女が物思いにふけっていたとも受け取れます。かき氷という夏に浮かれたネイルが、一晩にして少し季節外れのように感じられるという、ある意味少し達観した女性の感覚がうかがえます。昨日まであんなウキウキして可愛い―ってなったネイルなのにね、なぜでしょう、昨日と全く違って感じられる。駐輪場ってとこも、自立した女性というよりは、大学生から20代くらいの実家住みの女性って感じもして。好きな人との一晩と、その後に自転車で帰るっていう間にギャップがあって、より昨晩への想いをかきたてているような。

まだ 耳に残ってる ざらざらした声
ずっとずっとちかくで 聞いてみたかったんだ 

 はーーーー。(頭をかかえる)

その相手との初めての夜ということですね。いいなぁいいなぁ。

秋風が街に 馴染んでゆくなかで
私まだ 昨日を生きていた

これは過去の自分への回想なのでしょうか。

それにしてはこの思い出は、まだ生温かさを保っています。